徒然なるままに ~歴史作品の感想他~

歴史作品の感想とか色々

大仏を再建した僧、重源について ~平家物語7話より~

1.平家による南都焼き討ち

1180(治承4)年、5月の以仁王のの挙兵から平家に逆らう軍勢の蜂起が始まりました。京での以仁王の乱は鎮圧されるも8月には伊豆で源頼朝が挙兵、相模石橋山で敗退するも安房に逃れ、平家恩顧を含めた関東の武士たちを味方につけ、10月には富士川の戦いで対平家に大勝利を上げます。これに乗じ平家政権に押さえつけられていた南都(奈良)の興福寺東大寺も反平家勢力として蜂起します。これを迎え撃つのが清盛の命を受けた五男重衡。その武勇により南都の僧相手に善戦するも戦いは夜へと延び、、、闇夜の不意打ちを防ぐため、部下に灯りを求め民家に火をつけるが、、、この日が冬の強風により南都の興福寺東大寺にも焼け移る大火となります。銅製の大仏も頭と手が溶けて焼け落ち無惨な姿となってしまいました。これが失火だったか、意図的な放火だった諸説はありますが、南都および大仏が焼け落ちてしまったのは紛れもない事実となりとなります。

 

2.大仏再建事業

大仏が焼け落ちてしまったことは悲惨なことですが、この時代特筆すべきことはこれを5年内に、平氏と源氏が戦いを繰り広げている中、再建がされていたということです。再建の中心となった人物は治天の君後白河法皇。そして、重源という尊き僧です!(画像は東大寺に奉納されている木像!凛々しきお姿です。)

重源・・・あまり歴史の教科書にも出てこないのですが、調べてみると素晴らしき経歴と取組をしている偉大な人物でした!

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生まれた時期を見ると平清盛より3歳下、後白河法皇より6歳上という清盛世代です。源頼朝とは父子級の年齢差があります。そして、鎌倉仏教で習う浄土宗の祖法然は1133年生まれ、臨済宗の祖栄西は1141年生まれと実は平安末期の生まれでいずれも源頼朝より年長なんですね!意外でした(笑)

まぁつまり庶民や武家に広まる鎌倉仏教は源氏と平氏が争う不安定な世の中、そして一宋との交流を発展させた平家世間を背景として産まれてきたということになります。

 

重源は土佐日記で知られる紀貫之と同様の紀氏の出身で、13歳より真言宗醍醐寺に入ります。醍醐寺は鎌倉殿の13人で風を起こしそこない(笑:下写真)大活躍だった頼朝の弟、阿野全成も20年修行した由緒ある寺です!重源は40年以上修行していたので、風は勿論起こせそうな気がします(笑)

 

 

尚、その間に宋(今の中国)に三度も留学、1168年には臨済宗の祖栄西(下図)とともに帰国したという記録があります。これは平家政権で宋との交流が盛んになったからの賜物ともいえますが、それにしても当時最先端の学問をしていた立場であることが分かります。

日本でお茶を広めた人物は栄西? 鎌倉時代から南北朝時代 | 日本茶マガジン|日本茶を学び、楽しむオンラインメディアです。

 

 

そんな重源は大仏が焼け落ちた時にはすでに61歳でしたが、後白河院側近の藤原行隆の強い推薦により東大寺大勧進職に就きます。尚、当初東大寺大勧進職には浄土宗の開祖法然(下図)が推薦されましたが、辞退し同じく重源を推薦したと言われます。仏門に専念したかったのかもしれません。

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重源は源平の戦で荒れた世の中でも、全国の有力者を尋ね勧進(所謂クラウドファインディングですね)を行います。特に藤原秀衡源頼朝が莫大な寄進をしてくれました。また、大仏の鋳造には宋から呼んだ工認の技術を借り、これまでのあらゆるネットワークを駆使して再建に勤しみました。その結果、1885年には改修が完了しました。

開眼法要には後白河法皇(59歳)が自ら梯子に昇って筆を執り、大仏の眼に墨を入れました。(当時無理をするなの周りから止められましたが、聞かなかったようですww)

大仏を修復した後も、大仏の住処である大仏殿の再建も必要となります。この木材を探すため、重源は自ら周防国に赴き、巨木を切り倒し、それを奈良まで運ぶための水路や道路を整備させたと言われます。ここでも、宋で学んだ土木建築の技術を役立てたと言われています。

 

その後も僧房(僧の住まい)や塔の再建など課題は山積みの中、勧進および技術指導を続け、鎌倉幕府が開かれて十数年後の1204年に亡くなります。86歳でした。東大寺大勧進職は前述の栄西が継ぐこととなります。

 

同時代の人物で法然栄西は鎌倉仏教徒開祖として良く知られますが、この重源ももっと知られてほしいものです!

(そんな私も今回南都焼討を調べた中で知ったのですがww)

 

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