徒然なるままに ~歴史作品の感想他~

歴史作品の感想とか色々

新九郎奔る9巻 感想

歴史系はコミックスの感想も書いていこうと思います。

室町系でイチオシは「新九郎奔る!」

ビックコミックスピリッツ連載ですが、流石に毎週は財力的にも買えないので、コミックスで追いかけています。作者はパトレイバーや究極超人あーるで超有名な大御所、ゆうきまさみ先生!相変わらずの親しみやすい絵柄ですが、歴史検証もしっかりされていて、しかも創作部分も不自然さがないというクオリティです!

 

2月10日に最新刊9巻が発売されました。

 

時は文明8(1476)年、京の乱も収まっていないですが、舞台は姉伊都の嫁ぎ先、駿河今川家です。ついに、伊勢新九郎(北条早雲)の名が広く知れ渡る、駿河動乱に話は入ります!

夫である今川当主義忠は遠江遠征の中で討死。

しかし、その遠江攻めの相手は、足利義政(前将軍)や伊勢貞宗(政所執事)が必死で西軍から東軍に寝返らせた、斯波義廉家臣・甲斐敏光!

義忠は遠江欲しさに幕府への叛逆へとなっていました。(家臣の堀越陸奥守が国人衆の横地・勝間田に殺された仇討ちという名目で出陣しましたが、、大義は薄いですねw)

 

何となく、これまで小鹿側が当主討死により主家乗っ取りを企んだように思っていましたが、実際は反逆行為に対する後始末(幕府への恭順)をつける必要があり、嫡子である龍王丸を継がせるわけにはいかなかった事情があったのですね。

 

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尚、小鹿範満は龍王丸の叔父にあたり、当主となるには十分な血筋ですね。そして、母親が扇谷上杉家の娘であり、これにより扇谷上杉家家宰である太田道灌が介入してくることになります。

 

範満は8巻で、が誠実な男として描かれており、新九郎や伊都との関係も悪くなかったですが、9巻でも野心旺盛というより重臣達の意図を汲んで、そして態度が強硬となったのは弟が殺されてからとかなり理性的な人物として描かれ続けているのが印象的です!

 

そして、今回範満派・龍王丸派ともに色々な今川家臣団が出てきましたね。ただ、Wikipediaにも一部しか出てこなく、知名度は高くないようです(汗

しかし、その描かれ方も皆魅力的でした!

 

範満派:

三浦左衛門入道(範高)

年齢的に宿老ぽい。範満に父にも仕えていた模様で冷静なるも極左派。駿河三浦氏は三浦義村の長子朝村に発する。南北朝期に足利尊氏に属し、駿河安東荘を領し、後に今川氏に仕える。

 

 

福島修理亮
「くしま」と読む。三浦よりは中立的な態度、解説が上手い(笑)。福島氏は摂津源氏の系統で美濃に土着。室町期に駿河に移住し今川氏に仕える。子孫は北条家臣で有名な北条綱成福島勝広。

 

 

他に範満派には庵原氏、由比氏などがいました。(みんな地名から来てる氏族ですね)

 

龍王丸派:

 

朝比奈丹波守(泰煕)

家中で抜刀する位の龍王丸支持過激派。掛川城主。朝比奈氏は藤原北家祖で駿河国朝比奈郷(藤枝市)に土着した(平家流の説もあり)。娘が氏親の側室となり、義元を産んだ説もある(義元の母≠寿桂尼説)。

 

 

堀越源五郎(瀬名一秀)
龍王丸派の良心。龍王丸蟄居後の駿府との取次役となる。堀越氏は遠江今川氏の一族、源五郎駿河国庵原郡瀬名村に移り住み、瀬名を苗字とする。家康の正室瀬名姫は曽孫。

(冷静を通してますが、そもそも堀越一族救援のための義忠出陣でこの騒乱の元凶の一族であることは事実なんですよね)

 

 

あと、龍王丸派には岡部氏(子孫は岡部元信などで知られる)の名前がありました。

 

特に朝比奈丹波守と堀越源五郎はまだまだ活躍しそうな描かれ方でしたね!

(範満派は粛清され、その後龍王丸派が重臣となって今川氏を支えていくのでしょうし)

 

そして、調停は範満方の「太田道灌」と龍王丸方の「伊勢新九郎」に委ねられることに!

尚、新九郎は北川殿の弟という立場でなく、幕府評定衆:摂津修理太夫之親の代理人としての立場で調停役となるので、姉弟感とはいえ、話し合いがぎこちなくなるのが面白い描き方でしたよね。そして、弟も揉まれて成長していくのだなぁと、、、(勿論、母となった伊都様は子を守り・家も守るという別の戦いを続け強くなっていくのですが、、)

 

そして、兎も角ムッシュ道灌は手ごわかった。声は荒げんでも仕入れた情報量の多さ、新九郎の出方を見透かした応対、関東に厄介事を抱えていても焦らない余裕・・・言葉での戦は戦場よりも厳しく・胆力が求められるものと感じました。(まぁ、戦の経験はないですがw言葉の戦いは現代でも直面しますしねww)

 

交渉は一部の要求も通し纏まったもの、打ちのめされた気で一杯の新九郎でしたね!

 

さて、この後駿河は、新九郎はどうなるのでしょうか。

次巻予告で動乱はまだ冷めぬようですが、史実この後も新九郎の記録はあまりなく、次に来るのは1486年の龍王丸成長後の小鹿方襲撃(10年後)なので、どう繋いでいくかも気になります。

 

尚、太田道灌については「騎虎の将 太田道灌」という小説でも魅力的に描かれていてお勧めです。こちらは新九郎で描かれているよりはちゃんちゃな少年漫画主人公ぽいですが、伊勢新九郎も登場しており、並行してよむと面白いです!